日本蘚苔類学会

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「日本の貴重なコケの森」選定に際して

日本は,世界でも有数のコケ(蘚苔類)の豊かな国です.世界のコケの約1割,1600種を超えるコケが生育しています.

清らかな水が流れる場所には多くのコケが生育しています.貴重なコケが生育したり,コケが豊富で美しい場所は,その周辺一帯の自然度がとりわけ高いことを示していると考えられています.

 ところが,近年,コケの美しい場所が少なくなりつつあります.また多くの種類が絶滅の危機に直面するようになってしまいました.

 コケは大変小さな植物です.その生育は,水や光,気温など生育環境の変化に大きく影響されます.コケの生育環境を守るためには,その環境に影響を与えるエリア全体の自然環境を守る必要があります.貴重な種や多くの種をはぐくむエリア全体を私たちは「コケの森」と呼ぶことにし,その中でも,とりわけ貴重で重要な場所を「日本の貴重なコケの森」として選定することにしました.

 

「コケの森」を守ることは私たち自身の自然環境を守ることにつながると私たちは考えています.「日本の貴重なコケの森」の貴重性や重要性を一般の皆さんにも広く知っていただくことを通して,日本各地の「コケの森」がいつまでもあり続けることを私たちは願っています.皆さんのご理解とご協力を賜りますよう心よりお願いします.  

日本の貴重なコケの森選定委員会   

選定内規(PDF)

申請書様式(pdf形式)(MS-Word doc形式)

 

選定「日本の貴重なコケの森」


1)成東・東金食虫植物群落(2007年8月4日認定)
所在地
:千葉県山武市および東金市
範囲:国指定天然記念物「成東・東金食虫植物群落」全体,約3.2ha
所有・管理者:国,山武市教育委員会
認定理由:当地は,関東平野の低地に残された数少ない湿地として知られ,オオカギイトゴケとモグリゴケの世界で唯一の生育地である.また,コモチミドリゼニゴケやミヤコノツチゴケなどの希少が生育し,太平洋岸の低地の湿原や湿地に生育する蘚苔類にとって貴重である.


)西表島横断道(2007年8月4日認定)
所在地:
沖縄県八重山郡竹富町 西表島
範囲: 農林水産省指定の西表島森林生態系保護地域・自然休養林のうち,浦内川軍艦岩~イタチキ川合流点に至る遊歩道沿い
所有・管理者: 国,西表国有林(農林水産省沖縄森林管理署祖内森林事務所)
西表国立公園(環境省沖縄地区国立公園・野生生物事務所西表分室)
認定理由:西表島には,約30種の固有種や分布の南限とする蘚苔類が知られる.中でも当該地域は,これらの種が豊富に生育する地域であり,環境省(2007)および沖縄県版(2006)レッドリストに掲載されている47種が生育し,学術的に非常に重要な地域である.


)船越山池ノ谷瑠璃寺境内・参道ならびに「鬼の河原」周辺(2007年8月4日認定)
所在地:
兵庫県佐用町
範囲: 瑠璃寺参道,境内ならびに風穴「鬼の河原」周辺
所有・管理者: 瑠璃寺
認定理由:参道沿いはキヨスミイトゴケやソリシダゴケなどの懸垂性のハイヒモゴケ科の蘚類が多く見られ,ヒロハシノブゴケなどの絶滅危惧種が生育している.また,風穴周辺は,冷たく湿り気を含んだ空気が吹き出しており,イイシバコハネゴケやハイスギバゴケ,クモタマゴケなどが生育し,亜高山のような様相を呈し,低地としては特異な蘚苔類相である.学術的に貴重なだけでなく,多様な蘚苔類を観察することができる.


4)鳳来寺山表参道登り口一帯の樹林地域 (2007年8月4日認定)
所在地:
愛知県新城市(旧鳳来町)
範囲: 鳳来寺山表参道登り口一帯の樹林地域
所有・管理者: 鳳来寺
認定理由:ヤマトハクチョウゴケをはじめ,コキジノオゴケ,コバノイクビゴケ,イバラゴケ,タチチョウチンゴケ,クマノゴケ,キブネゴケなどの希少種の蘚類が知られ,苔類では生葉上苔類の各種が見られる.また,渓流に沿った林内には蘚苔類の豊富な生育がみられ,蘚苔類が景観上重要な要素になっている.

)獅子ヶ鼻湿原(2007年8月4日認定)
所在地:
秋田県にかほ市象潟町中島台
範囲: 「鳥海山獅子ケ鼻湿原植物群落及び新山溶岩流末端崖と湧水群」の名称で国の天然記念物に指定されている範囲(指定面積26.11ha)
所有・管理者: 国,農林水産省(鳥海国定公園)
認定理由:当湿原はブナの巨木に囲まれた湧水群で,水路や湧水池の底には水生の苔類がクッション状に繁茂して独特な景観を呈している.稀産種のハンデルソロイゴケやヒラウロコゴケの塊は直径1m以上に達し,「鳥海マリモ」と地元で称されている.また,ニセオオミズゴケなど4種のミズゴケ類が豊富に見られ,本州北部では通常標高1000m以上に出現するシモフリゴケやカギハイゴケなどが生育し,学術的に貴重である.


6)東京大学千葉演習林(2007年8月4日認定)
所在地:
千葉県鴨川市および君津市
範囲: 東京大学大学院農学生命科学研究科附属演習林千葉演習林における荒樫沢及び猪の川林道沿いの天然林
所有・管理者: 東京大学,大学院農学生命科学研究科附属演習林千葉演習林 天津事務所
認定理由:清澄山は,キヨスミイトゴケの名前の由来となった場所であり,南方系要素のコケが数多く生育し,分布の北限または,北限近くとしていている種が数多く報告されている.北方系要素の種も生育し,関東平野の北部から不連続に孤立して分布している種もある.また,環境省選定あるいは千葉県選定の絶滅危惧種が多く生育している.特に当渓谷沿いの天然林は当演習林から報告された蘚苔類が多数生育し,蘚苔類が景観の主体となっている.


7) 八ヶ岳白駒池周辺の原生林(2008年8月30日認定)
所在地:長野県南佐久郡佐久穂町及び小海町
範囲:八ヶ岳白駒池
所有・管理者:国有林(八ヶ岳中信高原国定公園,北八ヶ岳自然休養林)
認定理由:白駒池周辺はコメツガやシラビソなどの亜高山性針葉樹林に被われており,林床にはコケ植物の旺盛な生育が見られる.その景観は規模と美しさの点で優れ,「日本の貴重なコケの森」として選定し保護すべきものと考える.
 


8) 中津市深耶馬溪うつくし谷(2008年8月30日認定)
所在地:大分県中津市深耶馬溪
範囲:深耶馬溪うつくし谷の遊歩道沿い
所有・管理者:公有林[耶馬日田英彦山国定公園(特別保護地区)]
認定理由:本地域は大分県の北西部に位置し, 耶馬日田英彦山国定公園の一角にあり, 特別保護地区に指定されている.地形は耶馬溪火山による急峻な岩角地と渓谷が形成され, 渓谷に沿う森林は一部に植林されたスギが立つもののモミ,ツガなどの針葉樹とカエデ類などの広葉樹が混生する自然林が成立する.蘚苔類は種類, 量共に豊富で大分県屈指の生育地であり,本地域の蘚苔類は野口彰博士をはじめ多くの研究者の観察地とされてきた.
 


 9) 羅生門ドリーネ(2008年8月30日認定)
所在地:岡山県新見市草間
範囲:羅生門ドリーネおよびその周辺地域
所有・管理者:新見市,新見市教育委員会(国指定天然記念物,高梁川上流県立自然公園羅生門特別区域)
認定理由
羅生門一帯は,標高400 m前後の石灰岩台地(草間台)のドリーネにできた巨大な石灰岩の天然橋と,第1門から第4門までアーチがつながったカルストトンネルで,末端は羅生門第1洞と呼ばれる吸い込み穴になっている.カルスト地帯は特有の地形や地質と,特異な気象環境をもつために多くの動植物が生育している.蘚類は128種,苔類は39種が報告されており,その中には,羅生門の標本を元に新種発表されたセイナンヒラゴケ,イギイチョウゴケを初めとして,環境省レッドリスト(2007)において絶滅危惧Ⅱ類とされている,レイシゴケ,ホソバツヤゴケ,イギイチョウゴケ,準絶滅危惧種とされているヒロハシノブイトゴケ,キブリハネゴケ,ヨウジョウゴケなどが含まれている.


 10) 芦生演習林(2009年8月19日認定)
所在地:京都府南丹市美山町芦生
範囲:灰屋~七瀬谷出合
所有・管理者:京都大学,南丹波市
認定理由:近畿地方ではもっとも山地自然林が残されている地域であり,日本海側に分布する希少種や北方系の種が多数生育している.対象となる範囲は,少人数であれば観察のための入林許可を得るのが容易であり,高低差の少ない歩きやすい道であるのも関わらず多くの蘚苔類が生育する景観を楽しむことができる.


11) 赤目四十八滝(2009年8月19日認定)
所在地:三重県名張市赤目町長坂,三重県宇陀郡曽爾村伊賀見
範囲:日本サンショウウオセンター~香落渓落合

所有:延壽院ほか
管理者:三重県,名張市,NPO法人赤目四十八滝渓谷保勝会
認定理由:希少種が多数生育するというわけではないが,「日本の滝百選」や「森林浴の森百選」にも選ばれており,コケ植物が織りなす景観として優れている.


12) 月山弥陀ヶ原湿原(2010年8月19日認定)
所在地:山形県東田川郡庄内町
範囲:弥陀ヶ原湿原(木道沿い)
所有:管理者国有林(国指定特別天然記念物,磐梯朝日国立公園)
認定理由
月山の北斜面,標高1,400~1,600 m のなだらかな台地に広がる弥陀ヶ原には大小多数の池塘があり,コケ植物ではとくにミズゴケ類の旺盛な生育が見られ,その景観は規模と美しさの点で優れ,「日本の貴重なコケの森」として選定し保護すべきものである.

13)古処山(2010年8月19日認定)
所在地:福岡県嘉麻市
範囲:古処山(登山口~山頂)
所有:管理者国有林(国指定特別天然記念物,筑後川県立自然公園)
認定理由:古処山は標高700 m 付近から頂上にかけて石灰岩地となっており,石灰岩上には国の特別天然記念物に指定されているツゲの原始林が形成されている.登山道沿いの石灰岩上にはキヌシッポゴケ属の蘚類,オオハナシゴケ,ネジレゴケモドキ,ニセイシバイゴケ,セイナンヒラゴケ,クラマゴケモドキ属の苔類などの好石灰岩性の蘚苔類が生育している.山頂付近のツゲ林にはキヨスミイトゴケなどの懸垂性の蘚類が豊富に生育し,独特な景観を呈している.そのほか,オオミツヤゴケ,コキジノオゴケ,キブリハネゴケなどのレッドデータ掲載種も生育している.

14)乳房山(2010年8月19日認定)
 

所在地:東京都小笠原支庁小笠原村母島
範囲:乳房山(登山口~山頂)
所有:管理者国有林(小笠原国立公園,小笠原諸島森林生態系保護地域)
認定理由:乳房山は標高463 m で,タコヅル,ハハジマノボタンやワダンノキなど多くの固有植物が生育しており,林内の腐木上には小笠原固有の蘚類であるムニンシラガゴケの群落が見られる.また,樹幹には固有種を含む多くのクサリゴケ科やヤスデゴケ科の種が生育している.標高400 m を越えたあたりからは雲霧帯となっており,レッドリストの絶滅危惧種に指定されているオガサワラキブリツノゴケが出現し始め,山頂付近の一部には同じく絶滅危惧種に指定されているキノボリツノゴケも生育している.このほかレッドリスト掲載種としては,オガサワラカタシロゴケ,オガサワラキララゴケ,サケバキハネゴケ,シナクジャクゴケ,トサヒラゴケが生育している.


15)京都市東山山麓

所在地:京都府
17)屋久島コケの森
所在地:鹿児島県屋久島町
18)黒山三滝と越辺川源流域
所在地:埼玉県
19)奥入瀬渓流流域
所在地:青森県十和田市と秋田県鹿角郡小坂町にまたがる十和田湖を源流とする奥入瀬川の十和田湖畔
20)
所在地:

所在地:京都府京都市左京区浄土寺~北白川
範囲:南禅寺~熊野若王子~法然院~銀閣寺
所有・管理者:京都市,個人ならびに宗教法人
認定理由:希少種が生育するわけではないが,都市部近郊としてはコケ植物が旺盛に生育しており,歴史的景観とともに固有の風景を形成している.また南禅寺,法然院,銀閣寺はともにコケ庭の観賞価値が高い.特に銀閣寺の広大なコケ庭園は,白砂とウマスギゴケやスナゴケの緑のコントラストが見事.京都市内には他にも苔庭が有名な場所も多いが,アクセスの容易さからも普段苔に接する機会の少ない人が苔の美しさや生育の様子を間近に見ることができる点などを考慮して,今回の推薦場所は古都を代表する苔の景観であるということができる.


16)屋久島コケの森

所在地:鹿児島県屋久島町
範囲:ヤクスギランド~安房林道~淀川登山口~淀川小屋
所有・管理者:国有林,霧島屋久国立公園
認定理由:希少種が多数生育するだけでなく,コケ植物が織りなす景観として非常に優れている.屋久島にはこれまでにも白谷雲水峡や小杉谷,あるいは花之江河湿地など著名な場所がいくつも知られているが,今回申請する場所はそれ以上にコケ植物が豊富に生育する場所である.


17)大台ヶ原
所在地:奈良県吉野郡上北山村
範囲:大台ヶ原山およびその周辺地域
所有・管理者:国有林,吉野熊野国立公園
認定理由:大台ヶ原山(日出ヶ岳1695 m)は,多様な立地のもとに多様な蘚苔類の生育がみられ,希少種も多数生育している.台地状地域だけでも約350 種みられ,山域全体では650 種を超える蘚苔類を数える.また森林内における蘚苔類が織りなす景観として非常に優れている.


18)黒山三滝と越辺川源流域

所在地:埼玉県入間郡越生町黒山
範囲:黒山三滝周辺地域と越辺川源流域
所有・管理者:民有地
認定理由:黒山は,ミドリホラゴケモドキの基準標本の産地である).本種は,渓谷の湿った岩場に生育しているが,同じ岩場には,セン類のツガゴケをはじめ,タイ類のCephaloziella willsonii,トサハネゴケ,ニセヤハズゴケなど南方系の蘚苔類が多く生育している.周辺の樹木の枝からはキヨスミイトゴケが微量ながら着生し,生葉上にはカビゴケやナガシタバヨウジョウゴケなどが着生しており,埼玉県内では最も暖地性蘚苔類が多い地域である.また,北方系のヘリトリシッポゴケや希産種のミギワイクビゴケ,ヒロハチャイロホウオウゴケが生育するなど,蘚苔類が豊富である.


19)奥入瀬渓流流域

所在地:青森県十和田市に位置する奥入瀬川の十和田湖〜焼山区間
選定理由:渓流中の岩にはアオハイゴケ,タニゴケ,ミズシダゴケ,ホソホウオウゴケ,フジウロコゴケ,マルバハネゴケ,コアミメヒシャクゴケ,タカネミゾゴケなどの蘚苔類が定着している.このように渓流中の石の上に多様な蘚苔類が生育する景観は奥入瀬渓流を代表する景観の一つとなっている.遊歩道沿いに散在する岩にはエビゴケ,コツボゴケ,トヤマシノブゴケ,オオトラノオゴケなどが,倒木や橋の欄干にはクサゴケ,シワラッコゴケ,コフサゴケ,ミヤマリュウビゴケ,ツツソロイゴケなどがそれらの基物を覆い尽くしている.林内の樹木の樹幹にはオオギボウシゴケモドキ,キヌイトゴケ,アツブサゴケ,オオクラマゴケモドキ,ケクラマゴケモドキ,ハイハネゴケ,ヤマトコミミゴケ,基部にはアオモリサナダゴケなどが着生している.奥入瀬渓流は林床の朽木,樹幹,岩石上のほか,流水中の転石上まで満遍なくコケ植物群落が見られ,蘚苔類の存在が景観上重要であることから日本の貴重なコケの森として選定する.


20)群馬県中之条町六合地区入山(通称チャツボミゴケ公園或いは穴地獄)

所在地:群馬県中之条町六合地区入山
選定理由:チャツボミゴケ(Jungermannia vulcanicola)は酸性水域の水中或いは水辺に分布する水生のコケ植物であり,コケ植物の中でも最も高い耐酸性をもつ.チャツボミゴケの分布する入山穴地獄の強酸性湧水(源流水)並びに酸性河川水はpH2.5-2.9であり,ここに国内最大の見事な群落が存在している.


21) 苔の洞門

所在地:北海道千歳市支寒内
選定理由:函型の涸れ沢は2箇所に分かれ,それぞれ延長は約400mおよび600 m,両岸の高さは10 mにおよぶ.切り立った岩壁にエビゴケを主体としたコケ類が密な群落を形成し,特異な美しい景観を有している.


22) 然別湖周辺の風穴地帯と東雲湖

所在地:北海道河東郡鹿追町・上士幌町
選定理由:然別湖周辺は,4~1万年前に然別火山の溶岩ドームが崩壊してできた岩塊斜面が数多く存在し,広大な風穴地帯になっており,林床はミズゴケ類の厚いマットが覆っている.ゴレツミズゴケとホソバミズゴケからなる群落が広く見られ,ゴレツミズゴケが優占する林床は東大雪地域の風穴地帯を特徴づける景観である.また,セイタカスギゴケ,タチハイゴケ,ダチョウゴケ,イワダレゴケなどをはじめとする亜高山帯の蘚類も豊富に見られ,タイ類ではハットリヤスデゴケトゲハヒシャクゴケ,アパラチアウロコゴケなどの稀産種も確認されている.東雲湖(標高810 m)は,然別火山の活動によって形成した高層湿原で6種類のミズゴケ類が報告されている.然別湖周辺は,特異的に分布する風穴地の蘚苔類と高層湿原のミズゴケ類を見ることが出来る地域として貴重な環境であると考えられる.


23) イトヨの里泉が森公園

所在地:茨城県日立市水木町
選定理由:茨城県日立市水木町の「イトヨの里泉が森公園」には近接する泉神社からの湧水を水源とする池や小川があり,その水中に絶滅危惧種(II類)のカワゴケFontinalis hypnoidesの旺盛な生育が見られる.標高は約10mで,関東地方の低地として貴重なカワゴケ生育地である.


24) 横倉山

所在地: 高知県高岡郡越知町
選定理由:横倉山は牧野富太郎博士が研究の舞台とされた場所でもあり,ヨコグラノキなど多くの新種が本山産の標本をもとに発表されている.蘇苔類についても本山の名を冠したヨコグラハネゴケPlagiochila yokogurensisをはじめ,多数の新種が報告されている.これまでに411種もの蘚苔類の生育が報告されており,多種多様な蘇苔類が生育することがわかっている.クロコゴケが日本ではじめて報告されたほか,タイワントラノオゴケやキダチクジャクゴケなどの絶滅危倶種の生育が確認されている.


25) 湯湾岳山頂部一帯ならびに井之川岳

所在地: 鹿児島県大島郡大和村・宇検村ならびに徳之島町・天城町
選定理由:奄美大島湯湾岳・徳之島井之川岳山頂部一帯は,島嶼山頂に特有な蘚苔林が発達しており,カクレゴケ,シダレウニゴケ,ホソバハシボソゴケ,シマフデノホゴケ,ミミヒラゴケ,ボウズムシトリゴケ,ケナシオヤコゴケ,フィリピンオヤコゴケなど希少種が生育している.これらの稀少種の多くが,他地域に比べ旺盛に生育することも特徴的である.本地域では奄美群島のコケ植物相を代表する数多くの貴重な蘚苔類植物を間近に観察することが可能である.

 

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